自衛官の依願退職 ~どうすれば辞めれるの?~ ¦ 辞めたい、転職したい自衛官への情報

自衛隊

今回の記事では自衛隊の依願退職についてまとめていきます!

ネットで『自衛官,退職』って検索すると、「辞めさせてもらえない」とか「営内班長、小隊長が承認してくれない」とか、 辞めたいのに辞めれないという情報がたくさん出てくると思います。

実際に私も依願退職を経験しましたが、これは真実ですね。

正確に言うと、最終的には辞めれます。辞めるまでにすごく時間がかかるのです。

陸士・陸曹なら3か月~5か月、幹部なら4か月~9か月くらいはかかります。(その間にかなりの引き留めにあうはずです。絶対にスムーズにはいかないでしょう。)

なぜ、これほどまでに退職のハードルが高いのか?

そもそも「退職したい」っていう人を無理やり引き留め続けるのは違法じゃないのか?

特別職国家公務員である自衛官の退職の根拠となる「自衛隊法第40条」を紐解きながら、どうすれば辞めれるのかについて見ていきましょう!

この記事では任期制の隊員以外を対象としてます。任期制の隊員は任期満了が原則です。途中で辞めることも可能ではありますが...

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退職に関する根拠と法令・規則 

「法令・規則」って聞くとなんだかめんどくさそうですよね。笑

でも、退職しようと考えるならザックリでいいので知っておいたほうが良いです。

全ては退職を承認してもらうためにあるのですから。

そもそも民間企業のような就業規則は存在しない

自衛隊には就業規則は存在しません。正確に言うと、「就業規則」という名前の法令・規則がないのです。

その代わりに『陸上自衛官服務小六法』に記載してあるような各種法令・規則で定められています。

そして民間企業では就業規則で「退職の手続き」が定められているように、自衛隊では自衛隊法を基本法令とした各種法令・規則で定められています。

その中で最も重要な法令が「自衛隊法第40条(退職の承認)」です!

自衛隊法第40条とは?

全文紹介したのちに、重要な部分を解説していきますね!

(退職の承認)
第三十一条第一項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。

自衛隊法 http://www.interq.or.jp/kanto/just/siryou/05.html#sect_52

全文だとこんな感じです!個別に見ていきましょう!

第三十一条第一項の規定ってなに?

第三十一条第一項の規定で定められていることは、あなたの退職承認権者は誰なのかってことです。

最終的にはその人が「こいつの退職を承認する!辞めていいぞ!」って言えば退職できます。全てのめんどさい手続きは、この人に承認をもらうためにあります。笑

そしてその具体的な人物は以下のようになっています。

区 分承認権者
陸士・陸曹師・旅団長
幹部陸上幕僚長

承認権者は襟のところににお星様が2つ以上ついてる人たちです。

承認権者ではありますが、あなたが直接承認をもらいに行くわけではありません。

あなたが直接承認をもらう人は誰なのか?

あなたが辞める理由を説明し、承認を得る必要があるのは以下の人たちです。

区 分直接承認をもらう人
陸士・陸曹中隊長クラス
幹部連隊長クラス

所属している部隊で多少違うかもしれませんが、だいたいこんな感じです。

あとはそれぞれの承認者が報告をしていきます。中隊長→連隊長→師・旅団長→方面総監→陸上幕僚長と報告されていきます。

もし、途中で指導事項や確認事項があれば、逆順で戻ってきます。

この手続きがとても時間がかかるのです。

なぜなら、それぞれが上級者に報告するために、報告資料を作成して退職者の細部まで把握しないといけないからです。

退職する側からすれば「そんなことどうでもいいだろッ!」ってことまで確認されます。

もうそういう組織なんだって諦めるしかないですね...

もし、営内班長や小隊長が承認してくれなかったら直接承認者のところに退職の意志を伝えましょう!

「営内班長や小隊長に相談しましたが、退職の意志は変わらなかったので直接報告にきました」って言えば、よっぽどイカれてる隊長じゃないかぎり怒られないはずです。

退職を承認しないことは許されるのか

第40条の退職を承認しないことができる期間ついては、任期制隊員とそれ以外で記述が異なっています。

まずは、共通する部分を確認していきましょう。

これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるとき

このタイトルの一文の自衛隊の解釈について私は在職中に師・旅団法務幹部に直接電話で確認しました。法務官、法務幹部とは自衛隊で法律を専門にしている法務幕僚です。

約2時間ほど経ってきた回答はこうでした。

法務幹部
法務幹部

その解釈については、一般として有事や災害派遣中の状況を想定しているものです。
ですから、平時の訓練や平常業務においては適用されません。
もし、この記述を根拠に退職の上申を引き延ばしているのだとしたら、違法性を帯びる可能性があります。

つまり、有事や災害派遣中でなければ、任務の遂行に著しい支障を及ぼすとは認められないということです。

平時の訓練や平常勤務は除外されます。

このことを理解した上で次にいきます。

有事や災害派遣と重なった場合

この場合は第40条の記述のとおりになります。

任期制隊員なら → 任用期間内において必要な期間
その他の隊員なら → 最小限度必要とされる期間


退職は承認されません。

これは仕方ないですね。大規模な災害派遣中であれば退職の上申をしている場合ではないでしょう。

特に有事や災害派遣中でないとき

この場合の退職までの期間について、自衛隊の規則には書かれていません。というのも、この場合「退職を承認しない」ことは許されない行為だからです。

必要なのは、引継ぎも含めて「いつ退職するのか」という調整だけです。

自衛隊の手続きには、どうしても時間がかかるので約3ヶ月後に設定するといいでしょう。

逆に、転職する際にはその期間を見越して転職時期や転職活動を行う必要があるので注意してください。

この退職までの期間は具体的には決められていません。ですが、本人が「3か月後に退職したい」というのに「ダメだ!忙しいから5か月後にしろ!」と無理やり退職時期を延ばすのは不当な行為です。

その際、民法での法令が参考になります。

民法 (期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第627条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第627条

民法では最短2週間で退職できることになっています。

しかしながら、自衛隊の手続きの特性上、どうしても3か月はかかってしまいます。

自衛隊においては、最短で3か月くらいで考えたほうがいいです。あとは、その前後の時期で部隊と相談して退職日を決めましょう!

3か月という期間は一般社会の常識で考えて、十分すぎる期間です。この間に、引継ぎと代休・年次休暇を取得して次の職場に備えましょう!

雇用期間の定めのある任期制隊員はこの法令にはあてはまりません。一方的な雇用契約の解除はできないので、法律を武器に途中で退職するという手段は難しいです。

最終的な退職期間 ¦ 法的根拠というより手続き上の問題

私が退職していく方々を見てきた経験として、退職期間はだいたいこのくらいです。

区 分期 間
陸士・陸曹3か月~5か月
幹部4か月~9か月

この期間には、法的な根拠があるわけではなく、単純に手続き上の問題です。(ほんとはすぐに上申してくれれば、もっと早くなりそうですけどね。笑)

退職を認めてもらうためにすべきこと

ここでは退職を認めてもらうためにすべきことを紹介します。

退職を承認するにあたって自衛隊側が1番気にすることは「退職後もしっかりと生活をしていけるのか」ということです。

もっと言うと「生活に困窮して犯罪を犯す可能性はないのか」ということです。

あなたは退職すると「元自衛官」になります。この経歴は一生消えることはありません。

元自衛官が犯罪を犯したことが報道されてしまうと、自衛隊の社会的信頼を損なう恐れがあります。

そのため、退職の手続きは非常に煩雑で時間がかかるし、関係する書類も多いのです。

少しでもスムーズに承認して手続きが進むように次のことを実践しましょう。

退職理由を具体的かつ現実味のあるものにする

まずはこれです。退職理由が漠然としたものだと承認はおりません。

民間企業のように「一身上の都合により」ってフレーズは自衛隊では使えないのです。しっかりとした退職理由を隊長に説明する必要があります。

資料を作成できる環境があれば(無ければ手書きでも構いません)、退職の報告資料を作成したほうがスムーズです。

その際は以下のような項目で作成するとよいでしょう。

① 退職理由(短く簡潔に!)
② 退職に至る経緯と流れ
③ 退職後の進路
④ 退職希望日とその理由
⑤ 退職に向けた今後の活動
⑥ 現職と転職先との年収比較(3~5年分くらい)


これくらいの項目で作成できればかなり具体化されたものになると思います。

自分で実際に作成してみることで、「どうして退職したいの?」「退職後は何をするの?」といった質問にもはっきり答えられるようになるはずです。

自分の考えを整理することにも繋がります。

現実味のある進路(会社員以外に転職を考える人)

「退職後はミュージシャンになります!」
「そのために、路上で活動したりオーディションを受けたりして活動していきます。収入が少ないうちはアルバイトをします。」

個人的には全く問題ないです。その人が売れるかどうかなんて誰にも分りませんから。

可能性を計りきることなんて誰にも出来ないです。

ただし、この退職理由と今後の進路では、自衛隊は絶対に承認してくれません。
「アルバイトの収入だけで暮らせんのか?」「今何歳?もしなれなかったらどうするんだ?」という質問攻めにあい、最後に

「もう1度冷静に考え直せ」って言われて終わりです。

ですから、とりあえずは退職することを目標にしましょう!

嘘でもかまわないので、「退職後は専門学校に入校する」として進路に現実性をもたせることが必要です。

自衛隊では出来ないことを理由に!

これも大切です。なぜなら、自衛隊にはいろいろな職種・職域が存在するからです。

私の例をあげます。

ソフトウェア開発の仕事がしたいので転職します。

ん?IT分野に興味があるってことか?
それなら自衛隊にもサイバー関係の部署があるからそちらへの異動を考えてみないか。

ありがとうございます。でも、お断りします。
サイバー関連の部署があることは知っていますが、そこでは「開発」をすることはできないので。
自衛隊のシステムはほぼ外注ですよね?

そうか。でもサイバーに関する仕事は自衛隊しかできないぞ!
サイバーの人材は不足しているし、ちょっと考えてみないか。

いいえ、結構です。私は「開発」がしたいので。そもそもほんとにサイバー関係の部署にいける保証もないですし。
仮にサイバー関係の職についたとしても、幹部は2~3年で異動ですよね?それは私の歩みたいキャリアパスとは違います。

強く言ってしまうと、自衛隊という組織で働くことを私はもう望んでません。

そうか。でもちょって待て!
たしかサイバー関係で新しい組織ができるような...
その資料を見てからでも遅くないな、来週までに収集するからまた面談しよう!

・・・分かりました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。よろしくお願いします。
(いったいいつなったら退職の手続きに入れんの?もう1か月以上たってるけど)

こんな感じで、自衛隊でも出来ることを退職理由にしてしまうと部内の異動や、自衛隊で使える資格を取得させてそちらで働く道を勧められます。

みなさんはそもそも自衛隊を辞めたいのですから、これでは解決になっていません。

自衛隊では出来ないことを理由にしましょう!

借金ゼロ or 十分な貯金 or 転職先での確実な収入

退職するときに絶対に問題になるのが「金銭関係」です。

正直、退職を承認されない理由の多くはこれです。

資料として必要になるのが以下の3つです。

  • 借金の総額
  • 貯蓄額
  • 転職先での収入(年収の比較)

理想は借金がなく、貯蓄があり、ある程度の収入が見込める状態です。

この3項目のバランスが重要なので、退職を考えている人は早めから準備しておく必要があります。

ここで引っかかってしまうと、「これでは暮らせないんじゃないか?もう1度考え直せって言われてしまいます。

早めから金銭関係は準備・整理しておきましょう!

両親、夫や妻の理解を得る(味方につける)

重要です!これは自衛隊以外での転職も同じでしょう。

「家族は理解してるの?何て言ってるの?」って絶対聞かれます。

「家族は自衛隊を続けて欲しいって言ってます」とか正直に答えてはいけません。

またこう言われてしまいますよ?
「ご家族は冷静だな。もう1度家族とよく話してこい。」

家族は味方につけるべきです。退職の承認、退職日の調整、退職前の年次休暇取得といろんなところで理由に使えます。

簡単な資格を取得してアピールする

退職に向けて資格を取得することは強いアピールになります!

ようするに、「しっかりと準備して計画的に退職を考えていること」を隊長・上司に知ってもらうことができるからです。

資格はけっして難しいものである必要はありません。課業外の時間を上手く使って取得しましょう。

簿記、TOEIC、その他の外国語、MOS等の実務系...自分が取得できそうな中から、転職で役に立ちそうな資格を選びましょう。

承認してくれない...そんな時の強行的な手段

ちょっと強行的な手段です。それは 先に企業に内定あるいは公務員試験等に合格してしまう ことです。

民間企業の転職ではこの順番が普通ですよね。

自衛隊では正しい退職の手続きとは言えないので、強行的な手段となります。この手段を使うためには、いくつか注意点があるのでご紹介しておきます。

内定、入社時期は最低でも3か月後以降で採用してもらう

この段階ではまだ正式に退職の承認をもらっていない段階です。

入社の時期は最低でも3か月、余裕をもつなら4~5か月後で採用してもらいましょう。

5か月後の入社となると採用してくれる企業は少なくなるかもしれません。

しかし、退職に時間がかかる理由をしっかりと説明し、入社の熱意を示すことが出来れば正社員で採用してくれる企業はあります。

ちなみに私はこのタイプでした。笑
退職に苦戦した同期たちを数人知っていたからです。
内定をとっても文句を言われ、内定がないと承認してくれない...デッドロックです。笑

内定をもらったらすぐに報告!

内定をもらったらすぐに報告してください!

理由は、内定先の企業が防衛省と利害関係を有する企業でないことを証明するための書類の提出期限が内定から1週間以内だからです。

なんらかの理由で1週間後に間に合わない場合は、内定を受諾した日を少し後にしましょう。

自衛官でも知らない人が多いので気をつけてください!

この記事のまとめ

お疲れ様でした!結構な長文になりましたね。笑

最後にこの記事のまとめです。

●依願退職には時間がかかります!
●自衛隊法第40条が根拠になってます!
●退職時期の目安は
 陸士・陸曹→約3か月~5か月
 幹部→約4か月~9か月
●退職の意志を受諾せずに、不当に引き延ばし続けるのは違法です!
●スムーズに退職するためには事前の準備が大切です!

以上です!

参考になればうれしいです。

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