この記事では夏季休暇~正月までの期間をまとめています。
この期間は幹部候補生学校の目標である「普通科小隊長」としての完成期です。
第2次大矢野原、そして100km行進を含む総合訓練が待ってます。ヤバいと噂の藤山武装障害走も控えています。
普通科隊付教育を終えるとOCSも終わりがみえてきます。
『陸上自衛隊幹部候補生学校の全て』シリーズの第5弾です!
ちなみに前回の記事 「GW~夏季休暇」 はこちらです!
【灼熱】幹部候補生学校の夏!(GW~夏季休暇)| 生活、訓練、高良山登山走を見る
それではいってみましょう!
思い出深い ¦ 第2次大矢野原野営訓練
前回の記事で劣悪な環境で紹介した大矢野原演習場に再び戻ってきます。廠舎は相変わらずスパイシーな香りで満たされた空間でした。
第2次大矢野原野営訓練では、いままで積み上げてきた練度をもとに、「攻撃総合(普戦協同)」「防御総合」が大きくメインの訓練課目として設定されている野営訓練です。
この後の野営訓練は、100km行進を含む総合訓練を残すのみなので、段階を区切った最後の訓練となります!
メインの「攻撃総合(普戦協同)」「防御総合」で小隊長をできる人間は限られています。区隊全員がすることは出来ません。(人数が多すぎるので)
攻撃:4人 防御:2人だったような気がします。
私の区隊では、区隊長から役職が発表されました。この訓練では、役職の小隊長が実際に作成した命令をもとに、分隊長と隊員が動きます。区隊全員が動くわけです。
ですから、ある程度優秀な候補生が選ばれていました。選考基準のようなものは分かりませんが、わざわざ総合の小隊長をさせるのは理由があると思います。
私は防御総合の小隊長でした!
選ばれた理由は優秀だったからではなくこんな感じだと勝手に想像しました。笑
なしざわか...あいつはテキトーに手を抜いてるからここらへんで気合い入れとくか!
そのほうがいいですよ!
このまま部隊に送り込むわけにはいきませんね、なしざわは!
そして第2次大矢野原野営訓練が始まったのです(´▽`)
大迫力!! ¦ 攻撃総合(普戦協同)
攻撃総合です!この訓練の醍醐味は何と言っても本物の戦車と一緒に攻撃をすることです!ちなみに74TKでした。
動く戦車を実際に見たのは、入校前の富士総合火力演習以来でした。
この「普戦協同」というのは、普通科と機甲科(戦車)が一緒に突撃をするという意味です。さらに、普通科先導、戦車先導でどちらが先に突撃するかで分かれます。
戦車も空砲を使って突撃してましたが、音がすごいです!前進する時の地鳴りも凄まじいですね!真横を通過していくとかなりの迫力です。
ガルパンの精強さを思い知りました。
実際の部隊勤務で普戦協同の訓練を行う機会はそれほど多くありません。とてもいい経験でした。
まさかの土砂降り ¦ 防御総合
この防御は2夜3日の訓練です。
小隊長として参加したので、かなりの準備をしてプレッシャーを感じながら臨んだ訓練です。
前回の防御訓練とは構築する陣地・障害の規模が全然違います。作戦会議もしっかりと設定されており、まさに「総合」といったところです。
当たり前ですが、小隊長は穴は掘りません。
区隊の同期が一生懸命に工事してるを見ながら、自分は作業工程管理と進捗を区隊長に報告していくのが仕事です。また、戦闘指導・戦闘予行も綿密に実施しないといけません。
区隊の同期たちに助けられながら何とかこなしてました。
小隊長でしたが、区隊の同期には余計な苦労をさせてしまったかもしれません。
ただでさえキツイこの訓練。大矢野原の神はさらに試練を与えます。
台風のごとき土砂降り
2日目の夕方から恐ろしいほどの土砂降りです。せっかく構築した陣地も使い物にならないほどでした。
疲労困憊の同期たちを見て、「概成していない陣地は諦めるしかないか」と考えてしまいそうになりました。しかし、小隊長として「時間までの陣地概成は必成目標」です。
自分たちの遅延が作戦全体に影響を及ぼしてしまいます。
「陣地は概成させる。水をかきだして構築を進めてほしい。」そう同期たちに伝えると、みんな口では冗談交じりに文句をいいながらも懸命に掘ってくれました。
その結果、陣地は概成し訓練も無事に終えることが出来ました!
この訓練で1人の候補生として非常に成長できました。
幹部候補生の野営訓練の中で私が最も思い出深い訓練です。
藤山武装障害走
「アジア1キツい武装走」
ほんとかどうか知りませんが(笑)、こんなキャッチフレーズがあったような気がします。
「アジア1」ってのが気になりますね、世界1はどこの武装走なのか(笑)
そんな武装走ですがマジでキツいです。
未だに急な斜面を登ると、あの武装走の「対戦車崖」を思い出すほどです。
藤山武装障害走の概要
藤山武装障害走では、20個の障害をクリアする必要があります。
基準タイムは男性:26分30秒 女性:32分でした。
詳しくはこちらを参考にしてください!
この藤山武装障害走は最後の卒業間際までなかなか合格できない候補生もいます。
自分達の代でも3~4人ほどずっと練成をしていました。
土曜日も練成をしてきた
高良山登山走が終わってからの練成のメインは藤山武装障害走へと変わります。
この障害走の嫌なところは「そもそも場所が遠い」ことと「迷彩服と半長靴が毎回泥だらけになる」ことでした。
整備するのにも時間がかかるので、この練成の期間は土曜日がほとんど潰れていました。
自衛官は装備をつけて銃を背負って山道を走れるから自衛官なんだ。
ランパン、ランシャツで走るなら市民ランナーで十分だ。
区隊長はそんな風に言ってましたね!実際、この藤山武装障害走で求められるのは純粋な走力だけではありません。
高良山登山走ではあまり速くなくても、武装障害走では結構速い人がいたりします。
高良山登山走の順位とは全く別の順位になる可能性が十分にあります。
この辛さは実際に体感してください。笑
一生記憶に残るはずです!
ちなみに、私は19分28秒でした!
障害はノーミスでしたね。
いよいよラスト! 総合訓練
いよいよ最後です!この総合訓練の目玉は100km行進です!
1日50km、2日間かけて100kmを歩き切ります。幹部候補生学校に入る前は、「100kmなんてホントに歩けるのかよ...」って心配でした。
実際歩いてみた感想としては、75~85km地点で心が折れかけました。意外とこれくらいの距離が一番しんどかったですね!
「もう無理ですって言って、救護車両に乗っちゃおうか」とかちょっと真剣に考えてしまうほどでした。
1日目の50kmを歩いたあと休息ができますが、とてもゆっくりできるものではないです。
真っ暗で何も見えない中で、バディと二人で手探りでビバークをたて、エアーマットを敷いて横になるだけです。ほとんど体力は回復しません。
こんなキツい100kmを歩き切ったのは、90%のやせ我慢と10%の「ロキソニン」のおかげだと思ってます。笑
なぜロキソニンかというと「足の痛み」を緩和してくれるからです。歯の痛みにも効くなら足の痛みにも効く!まさにその通りです。
私は1箱持って行っていたので同期にたくさん配りました。笑
私自身も「過剰摂取上等」って感じで飲みまくりました。
もう「今を乗り越えられればそれで構わない」って感じです。
100kmを歩き切り、最後の朝を迎える
100kmを無事歩き切りました!同じ区隊の同期も全員歩き切りました!
その後、偵察~攻撃となります。休む暇はありません。笑
「行進」はあくまで「移動」なのでそこから作戦が始まるんですよね。
最後、突撃をして「状況終了!」の声がかかったときに「あっ、とうとう全ての訓練が終わったんだ」と感じました。
すごいですよね。7が月前まで普通の大学生だったんですから。約半年でここまで成長させる幹部候補生学校という場所がすごいと思います。
それと「普通科に配属されなければ、もう突撃はしなくていいのかなぁ、だったらそれがいいな」なんて考えてました。笑
すみません。
ご褒美 ¦ 韓国研修
総合訓練も終わり、韓国研修です!
話によると今の幹部候補生学校では韓国研修はなくなってしまったようですね。まぁ、今の日韓関係を反映してのことでしょう。
この韓国研修はとても楽しかったです。韓国士官学校の生徒も以上に丁寧な「おもてなし」をしてくれました。余ったおやつを全て私のバックに詰め込んでくれるのですから。笑
いや、ありがたいけど...
そんな隙間という隙間に詰めなくても..笑
緩衝材じゃないし
研修はとても充実してますし、課業外は観光もできます。私は初めての海外でしたのでとても新鮮でした。
韓国士官学校の学生は優秀そうな人が多かったですね!あとは女子生徒のスタイルがめっちゃいい!そういう人を選抜したんですかね。笑
普通科隊付教育 1か月間
11月~12月にかけて普通科隊付教育が行われます。内容は配属になった駐屯地・部隊によって違います。
普通科隊付教育で行った駐屯地のある方面隊に配属されるって噂がありましたが、あまり関係なかったようです。
候補生の外出とか営内生活での扱いも配属の駐屯地・部隊で決まります!
私は地元の駐屯地でしたし、めっちゃ緩かったので最高でした!笑
職種・任地の希望
たしか9月~10月くらいに職種・任地の希望調査があります。
幹部の職種はほぼ変わることはありません。一生付き合っていく職種です。私たちの97BUは第8希望まで調査しました。
希望職種は人によってバラけますが、野戦特科の不人気ぶりはすごかったですね。笑
区隊では第1志望は1人もいませんでした...
職種が何になるかは分かりません。ほとんどは第3~4希望以内で決定していたと思います。
ですが、優秀すぎる成績の人だと全く希望していない職種になっている人もいました。
全部で15職種ありますが、全ての職種が平均的になるように成績分布にもとづいて配属されるからです。
間違いなく幹部人生を左右する分岐点です!その後に出会う人々、職域、役職、身につく知識、価値観の全てに影響してきます。
職種・任地は運命です!ですが、全く適性のない職種にはならないはずです。将来的に共通職域の業務につくようになれば職種は関係ありません。
陸上自衛隊の幹部としての仕事をするだけです。
私は幸運なことに職種・任地ともに第1希望でした!
両方第1希望は意外と少ないですね。
夏季休暇~正月はここまで!
以上でシリーズ第5弾は終わりです!お正月休みは職種・任地の発表を楽しみにしながら過ごしました。
次はこの『陸上自衛隊幹部候補生学校の全て』の最終章「正月~卒業まで」です。記事は下のリンクからどうぞ!
【卒業】OCSの全て(正月~卒業)| 職種発表、沖縄研修、そして卒業パレードを見る
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