この記事では30歳を超えて自衛隊入隊を考えている方に、私が入隊をオススメしない理由をまとめています。
自衛隊の採用試験は、その他の公務員試験に比べて圧倒的に受かりやすいです。
そのため、社会人であまり勉強時間を確保できない方で、安定の公務員への転職を望む方にとっては有力な選択肢のひとつだと思います。
※「30歳以上でも入隊をオススメできる人の条件」も記事にしました。気になる方は是非!
★30歳以上でも自衛隊入隊をお勧めできる人の条件は?
しかし、私はオススメしません!もし、公務員になりたいのであれば、各自治体の社会人経験者枠や30歳を超えても受験できる警察官をオススメします。
年齢引き上げの背景を確認しつつ、オススメしない理由をみていきましょう!
逆に自衛官になるメリットや教育制度については自衛隊の地方協力本部(通称:地本)に尋ねてみてください!
そもそもの年齢引き上げの背景
大きなトリガーとなっているのは少子高齢化による若年人口の減少です。
自衛隊では、陸士が不足しています。若年層の人口は今後も低下の一途を辿るのみですから、年齢を引き上げることで採用対象者を確保することが目的です。
また、陸士の離職率の高さも問題です。陸曹になる道を選ばずに、任期満了あるいは依願退職する陸士が一定数います。(そもそも任期制隊員とはそういうシステムですが。)
自衛隊は特殊な組織です。幹部、陸曹で退職者が出てしまっても、外部からの転職者でそのポストを埋めることは出来ないのです。
結論は採用難と人手不足への対策です。
現在はこのように引き上げられています。
種 目 | 採用年齢 |
自衛官候補生 | 採用予定月の1日において 18歳以上33歳未満 |
一般曹候補生 | 採用予定月の1日において 18歳以上33歳未満 |
実質32歳まで入隊することが可能になりました。もともとは満26歳までだったので、だいぶ引き上げられましたね!
では、オススメしない理由です!
採用=正社員ではない ¦ 最短でも時間がかかる
最大の理由です。その他の公務員試験と違って採用されれば公務員という安定の地位が手に入るわけではありません。
陸士として入隊後、陸曹候補生試験に合格して3等陸曹に昇任しないと定年まで勤務することはできません。
ですが、この正社員としての3等陸曹に昇任するのには時間がかかります!
下の表をみてください。
1選抜とは、1回目の陸曹候補生試験で受かることをいいます。
最短でも一般曹候補生で約2年8ヶ月、自衛官候補生で約3年8ヶ月もかかるのです。
それまでは、安定した地位とはいえない「陸士」となります。
1選抜で受かるのは難しい
そもそも1選抜で合格することは非常に難しいです。学科、体力測定、分隊教練、口述試験でかなりの好成績をとらなければいけません。
あとは、自衛官候補生なら連隊長・副長クラス、一般曹候補生なら旅団長の好みですかね!笑(半分は冗談、半分は本当です...)
2選抜、3選抜になるとそれだけ陸曹に昇任する時期も遅くなってしまいます。
何回でも挑戦できるは嘘(自衛官候補生の場合)
自衛官候補生の場合、入隊して2任期目で初めて受験ができます。
ですから、最大で3回までは誰でも受験することが出来ます。しかし4回目は受験できないかもしれません。
理由は継続任用の条件が厳しくなるからです。4回目は3任期目で受ける試験になります。
継続要件が厳しくなってる?(改定後)
下の表をご覧ください。
3任期目だけA以上になってますよね!
これは『陸士の継続任用に関する達(第4条)』で示されているんですね。
つまり、中隊長クラスが「こいつは優秀で見込みがあるから3任期の継続を認めよう」って判断しないと継続できないのです。
したがって、もし継続できなかった場合は2任期(4年目)で任期満了で退職となってしまいます。
32歳で入隊したら36歳からまた転職活動です...(;´∀`)
これって矛盾してる?
当たり前ですが、その人が「優秀な陸士」だったらそもそも3回目までで陸曹候補生に合格しているはずです。
ですから、基本的に2任期までに合格を目指さないといけません。
4回目は確実に受けれるか分からないので、かなりの精神的なストレスやプレッシャーの中で受験しなければなりません。
陸曹になるまで絶対に私生活で事故・違反を起こしてはいけない
入隊後、陸曹になるまでの長い期間...
絶対に私生活で事故や違反は起こしてはいけません!
ちょっとしたスピード違反でもダメです!もし、違反や人身事故を起こしてしまったら陸曹にはなれません。
たとえあなたがどんなに優秀でも、陸曹にはなれないのです・・・
陸士でもクルマに乗ることはできます。しかし、このような理由で陸士のうちはクルマに乗ることをよく思わない部隊も多いです。
100%絶対に事故や違反をしないとは誰も言えないからです。
スキルや経験はあまり考慮されない
30歳を超えて入隊を考える方の中には、高いスキルや知識を持っている方がいるかもしれません。しかし、自衛隊の階級昇任の早さは、教育隊での成績が全てです。
もっと焦点を絞れば陸曹教育隊の成績が全てです。
どんなにIT関連の知識があったり、会計や人事業務、高度な技術的なスキルを持っていても、教育隊の成績が悪ければなかなか昇任できません。
みんな一律で新隊員教育→陸曹候補生試験→陸曹教育隊→職種後期教育と進みます。
そして、なんだかんだで陸士~陸曹教育隊の時代は体力勝負です。笑
18~22歳と同じ土俵で勝負しなければいけません。
職種は希望できるが絶対ではない
特定の分野を活かしたいと思う方がいるかもしれません。私がエンジニアなので、IT系を例に挙げます。
「どうしてもITスキルを活かしてサイバー分野で勤務したい!」と希望しても配属されるかどうかは分かりません。全く畑違いの部署・職種かもしれません。
自衛隊では、その後どんなに希望しても職種を超えて希望の部署に異動することは難しいです。
活かしたいスキルや進みたい分野がある人は別の公務員試験を受けましょう。
給料 = 号棒×階級
自衛隊の給料は号俸(勤続年数)と階級で決まります。ですから、入隊が遅いということは、生涯年収・退職金に大きく影響します。
号俸は基本的に1年間で4号俸ずつ上がりますが、特別昇給すればMAX8号俸が1年間で上がります。
特別昇給は簡単にたくさんできるものではないので、期待しないほうがいいでしょう。
陸士~3曹くらいの時は給料は安いです。営内生活なら家賃や光熱費、食費がかからないので、それで節約はできます。
定年が早い(延長される方向)
自衛隊は一部を除いて定年が早いです。陸曹長で55歳です。
定年退官後は、自衛隊の援護を通じたりして再就職先を探します。または、自衛隊に再任用されるという方もいます。
どちらにせよ、「人生100年時代」です。定年後に何らかの仕事をしなければなりません。
自衛隊というのは、特殊な環境、特殊な技能・知識で固められています。民間で高く評価されるようなスキルや経験はあまり身につかないと考えたほうがよいでしょう。
20年後、「自衛隊で培った経験と忍耐力」だけでは良い再就職先は見つからないかもしれないですね...(*_*;
この記事のまとめ
最後にこの記事をまとめます!
最大のリスクは、陸曹になれなかった場合に34~36歳で転職をしなければいけないことです!
ありがとうございました!
採用情報や地本の広報官の話から情報収集して入隊するかどうか決めて下さい!
その時のリスクやデメリットとして今回の記事が参考になればうれしいです。
コメント