【人材難】自衛官採用試験の倍率は下がってる?懸念すべきは「質の低下」

自衛隊

今回は「静かなる有事」とも言われている自衛隊の「採用難」、「人材難」についてまとめています!

みなさんご存じの通り、若年人口の減少や就職先・働き方への意識の変化に伴って自衛隊の募集環境はとても厳しくなっています。

自衛隊の対策として大きくは以下のような施策を実施しています。
・女性隊員の活躍推進
・採用年齢の引き上げ、採用要件の緩和
・縁故募集(現在は改名され、隊員自主募集)
・SNSやYoutubeでの広報活動
・定年年齢の引き上げ(今後はさらに引き延ばす予定)


もう涙ぐましいほどの努力です。特にSNSやYoutubeでの広報活動は。笑

ちょっと前に話題になった「自衛隊の、ソレ、誤解ですから!」といった広報チャンネルなどを見てもらえれば分かります。

この動画には賛否両論いろいろありましたね・・・笑
まぁ、コメントしてる現役自衛官の気持ちも理解できますね。

自衛官の募集を担当している地方協力本部(通称:地本)は、昔は「楽な部署」というイメージがありましたが、現在は最も厳しい部署かもしれません。

なぜなら、民間企業の営業のように「数字と実績」を求められるからです。

それも応募者数の減少はどうしても避けられない状況なのに、かなり厳しい応募者、採用者の目標を課されます。

採用倍率だけでみれば、どの試験区分でも「定員割れ」にはなっていません。少なくとも1倍以上はあります。

定員割れしてないなら大丈夫でしょ?
採用すべき人数は達成できるよ?

確かに採用人数は達成できます。しかし、「採用すべき人間を選抜する」というフィルターは確実に弱くなってしまいます。

高い競争倍率から選抜された集団とそうでない集団では、平均するとどうしても「人材としての質」に差がでます。(※もちろん、個人差はあるので優秀な人材は優秀です。)

そもそも、前提として「優秀な人材」が自衛官を第1志望にしてくれる可能性はそれほど高くないはずです。

職業としての人気も、東日本大震災以降は過熱しましたが、現在ではその熱もほぼ冷めています。

採用人数は計画で決まっているので、採用するボーダーラインはどんどん下がります。

それが現在、自衛隊が直面している「人材難」という問題です。

この問題は、幹部、一般曹候補生、自衛官候補生の全てに共通する問題です。

今回の記事では募集状況や採用状況を紹介しながら、「人材難」という視点からまとめていこうと思います。

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募集対象人口の推移 | 採用年齢引き上げによる増加

平成30年度『防衛白書』 図表Ⅲー3-1-1から引用

平成30年度の資料です。

この段階では、まだ採用年齢は満33歳へ引き上げられてはいません。

グラフを見てもらえれば分かりますが、18歳~26歳の人口が大きく減少していることが分かります。

令和元年度『防衛白書』 図表Ⅳー1-1-1から引用

令和元年度の資料です。

採用年齢の引き上げにより募集対象人口としては、大きく増加しています。

しかしながら、18~22歳のように「就活生」として存在しているわけではないので、全員が募集の対象にはならないでしょう。

倍率の変化(参考例:一般幹部候補生)

自衛官の採用試験の中でも、最も高い倍率を誇っている一般幹部候補生を参考にしたいと思います。

今回は、陸・海・空/男女合計で集計しました。

年度応募者数採用者数倍率
H2510,36328935.9
H269,74131830.6
H278,50235424.0
H287,57344916.9
H296,36335517.9
H305,43333616.2

応募者数の減少が進んでいますね。平成25年と比較すると半分近く減少しています。

この短期間での減少となると主な原因は、人口変動というよりは、「就活・転職者の就職先や働き方に対する意識の変化」かもしれません。

一般曹候補生や自衛官候補生の倍率についても、緩やかに減少しています。

それぞれの倍率についてはこちらの記事で集計しています。
【最新】一般曹候補生の倍率(陸・海・空)/過去6年分の推移を見る
【最新】自衛官候補生の倍率(陸・海・空)/過去6年分の推移を見る

おそらく、今後の採用において応募者数が劇的に増加することはないでしょう。

一般幹部候補生以外にも、最初から正社員として採用するような試験区分ができたら30歳前後の人でも応募者が増加するかもしれませんね。

「人材難」という視点が大切

採用者数は「合格したけど他に就職する」という内定辞退者数も見込んで決定しています。

ですから、応募者数が減少してくると「受験した人はほとんど合格させないといけない」という状況になってしまいます。

1次試験はみんな合格させ、2次の面接でよっぽど酷い人だけを不採用にするという形になってしまいます。

当たり前ですが、組織としては少しでも「優秀な人材」を採用したいわけです。一緒に仕事をする仲間を採用するのですから。

しかし、あまりにも少ない競争から選んだ人材では、平均するとどうしても質は下がってしまいます。

「誰でもどんな人間でもいいからとりあえず頭数を揃えればいい」という問題ではありません。

部内幹部(I幹部)の試験には競争がなくなっている

自衛隊の幹部になる方法として、3曹で部内幹部候補生試験を受けて合格するという方法があります。(I幹部と呼ばれる人たちです。)

幹部の試験だから難しそうと思うかもしれません。しかし、実際にはそんなことはありません。

なぜなら、誰も幹部になりたがらないからです。笑

幹部になりたがらないのは、単純にメリットを感じないからでしょう。大変そうな幹部の姿をずっと見てきたのもあると思いますが。

結果として、部内幹部候補生に志願した人はたいてい合格してしまいます。

その人が「幹部に向いているかどうか」は関係ありません。

自衛隊としては、幹部になってくれるだけでもありがたいのですが、「部内幹部の質の低下」が問題になっているのも事実です。

もちろん、部内幹部でもすごく優秀な人はいます!

まさに少ないパイの奪い合い

若年人口が減少していく中では、「優秀な人材」の絶対数も減っていきます。

まさに「少ないパイの奪い合い」を他の公務員や売り手市場の民間企業としなくてはいけません。

自衛隊としても、「どうしたら若者にとって魅力的な職場環境を提供できるのか」ということを真剣に考える必要がありそうです。

もしかしたらそれは、軍隊としての特性や自衛隊の伝統的な考え方・働き方からやや逸れた改革が必要になることもあるでしょう。

縁故募集(隊員自主募集)のノルマを各部隊に強制するようなやり方では限界があります。

「やりがい」や「使命感」だけではなかなか人は集まりません。

このパイの奪い合いに負けてしまうと、防衛白書に掲げているような「 確固とした入隊意思を持つ優秀な人材 」の採用は難しくなってしまうでしょう。

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